今日の東京は予報されていた雪ではなく雨が降っている。
あの日もたしか雨だった。
一人で外出していた僕は途中、一人の男性に道を尋ねられた。余談だが僕は何故かよく道を尋ねられる。決して声をかけやすい見た目とは思えないのだが。
あいにく知らない場所だったので丁重に謝ったが、男性はとても落胆した表情だった。
一度は別れたものの、男性の言葉になまりがあり土地勘がなさそうだったこと、雨に濡れていたために、走って追いかけ、一緒に探すと告げ傘を彼にも分けた。
スマホを頼りに2人で探し歩くと、呆気ないほどに簡単に見つかったが、僕が追いかけてきたことと、一緒に探してくれたことに凄く喜んでくれている様子で何故か名刺を渡された。聞いたこともない会社だったが。
でも僕は彼女にこの話を名刺を見せながら話してあげようと上機嫌だった。優しいねぇって褒めてくれるかな?他にも何かいいことでも起こるかななんてことすら期待してしまっていた。
なのに、その日に彼女に別れを告げられてしまった。
あの日以来、僕はずっとズブ濡れのままで。
彼女との思い出が色濃く残る街で生きるのが苦しすぎて、今の街に逃げるように引っ越してきたけど、離れてしまうとやはり恋しくて、生きているうちにもう一度、、、彼女と一緒に歩いた道を、別れてから彼女を思い胸が痛かった道をもう一度歩いてみたい。